嶋本隆司 医師コラム
最新情報に基づいた抗がん剤治療(11)
2010年 4月28日
嶋本隆司 医師
国際水準の最新情報
~ESMO(欧州臨床腫瘍学会)2009の報告~
第3回 消化器がん
2009年9月20日~24日の日程でドイツ・ベルリンにおいて第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)と第15回欧州癌学会(ECCO)が初めての合同学会を開催しました。その最新情報の3回目は「大腸がん以外の消化器がん」に関してのお話です。
~ESMO(欧州臨床腫瘍学会)2009の報告~
第3回 消化器がん
2009年9月20日~24日の日程でドイツ・ベルリンにおいて第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)と第15回欧州癌学会(ECCO)が初めての合同学会を開催しました。その最新情報の3回目は「大腸がん以外の消化器がん」に関してのお話です。
●アジア人・日本人に対する有効性が期待できる治療法
まずは、進行性肝細胞がんに対するソラフェニブの報告です。現在まで進行性肝細胞がんに対するソラフェニブの臨床試験は、欧米を中心として行われた「SHARP試験」とアジアを中心に行われた「アジア太平洋試験」の2つの第3相試験があり、今回は双方の臨床試験を統合解析した結果が発表されました。
SHARP試験では、602人の患者さんがソラフェニブ群(299人)とプラセボ群(303人)に分けられ比較されました。その結果、生存期間の中央値は、プラセボ群が7・9カ月だったのに対し、ソラフェニブ群は10・7カ月と延長しており、31%の死亡リスクの減少が認められました。一方で、中国・韓国・台湾の23施設で226人を対象に実施されたアジア太平洋試験では、ソラフェニブ群の生存期間中央値は6・5カ月、プラセボ群は4・2カ月でこちらも32%の死亡リスクの減少が見られました。また、増悪までの期間も、SHARP試験・アジア太平洋試験ともにソラフェニブ群で統計的に有意な改善が認められました。
この2つの試験を比較すると、欧米とアジアという地域の違いおよび患者さんの病態の違いはあるものの、全生存期間や増悪までの期間におけるソラフェニブ群の治療の有効性は一致していると考えられます。
続いて、日本からの報告で注目すべき2つの発表を紹介します。1つは、ハイリスクのGIST(消化管間質腫瘍)に対し、術後の補助療法としてイマチニブを投与した臨床試験です。この試験では、KIT(チロシンキナーゼ活性を有する細胞膜貫通タンパク)陽性でハイリスクのGISTのうち原発腫瘍を完全切除した患者さん64人を対象に、術後にイマチニブを1年間投与しました。その結果、1年間の治療完遂率は76・6%でした。その後のフォローアップ期間は約2年で、この間に20人が再発しました。年度別の無再発率は1年目96%、2年目76%、3年目では60%と、イマチニブによる再発抑制効果は治療開始1年目に最も顕著な傾向が見られました。主な副作用は眼瞼および顔面浮腫・悪心・皮疹・好中球減少などで、新たな副作用の報告は見られないことから、日本人に対しても術後のイマチニブの投与は前向きに考慮すべき治療だと考えられます。
2つめは、切徐不能の膵がんに対するエルロチニブとゲムシタビン併用の臨床試験です。この試験では、エルロチニブ100mg/日を経口で連日投与し、ゲムシタビンは1000㎎/㎡を1日・8日・15日に点滴静注し、これを4週に1回投与を1サイクルとし、8サイクル実施しました。対象となったのは切徐不能の膵がん患者さん106人(局所進行性17%、転移性83%)。この試験において大きな問題となる有害事象は特にあげられておらず、有効性については全生存期間の中央値が9・23カ月、1年生存率が33%、奏効率は20・3%認められました。この結果から、両剤の併用は日本人の進行性膵がんの患者さんにも有効であり、生存の転帰に寄与することが期待できると考えられます。
このように消化器がんの領域においても分子標的薬を用いた治療は日々、進歩しています。当院では、世界レベルの情報を網羅し、最新情報に基づいたセカンドオピニオンを提供していますので、いつでもお気軽にご相談ください。
まずは、進行性肝細胞がんに対するソラフェニブの報告です。現在まで進行性肝細胞がんに対するソラフェニブの臨床試験は、欧米を中心として行われた「SHARP試験」とアジアを中心に行われた「アジア太平洋試験」の2つの第3相試験があり、今回は双方の臨床試験を統合解析した結果が発表されました。
SHARP試験では、602人の患者さんがソラフェニブ群(299人)とプラセボ群(303人)に分けられ比較されました。その結果、生存期間の中央値は、プラセボ群が7・9カ月だったのに対し、ソラフェニブ群は10・7カ月と延長しており、31%の死亡リスクの減少が認められました。一方で、中国・韓国・台湾の23施設で226人を対象に実施されたアジア太平洋試験では、ソラフェニブ群の生存期間中央値は6・5カ月、プラセボ群は4・2カ月でこちらも32%の死亡リスクの減少が見られました。また、増悪までの期間も、SHARP試験・アジア太平洋試験ともにソラフェニブ群で統計的に有意な改善が認められました。
この2つの試験を比較すると、欧米とアジアという地域の違いおよび患者さんの病態の違いはあるものの、全生存期間や増悪までの期間におけるソラフェニブ群の治療の有効性は一致していると考えられます。
続いて、日本からの報告で注目すべき2つの発表を紹介します。1つは、ハイリスクのGIST(消化管間質腫瘍)に対し、術後の補助療法としてイマチニブを投与した臨床試験です。この試験では、KIT(チロシンキナーゼ活性を有する細胞膜貫通タンパク)陽性でハイリスクのGISTのうち原発腫瘍を完全切除した患者さん64人を対象に、術後にイマチニブを1年間投与しました。その結果、1年間の治療完遂率は76・6%でした。その後のフォローアップ期間は約2年で、この間に20人が再発しました。年度別の無再発率は1年目96%、2年目76%、3年目では60%と、イマチニブによる再発抑制効果は治療開始1年目に最も顕著な傾向が見られました。主な副作用は眼瞼および顔面浮腫・悪心・皮疹・好中球減少などで、新たな副作用の報告は見られないことから、日本人に対しても術後のイマチニブの投与は前向きに考慮すべき治療だと考えられます。
2つめは、切徐不能の膵がんに対するエルロチニブとゲムシタビン併用の臨床試験です。この試験では、エルロチニブ100mg/日を経口で連日投与し、ゲムシタビンは1000㎎/㎡を1日・8日・15日に点滴静注し、これを4週に1回投与を1サイクルとし、8サイクル実施しました。対象となったのは切徐不能の膵がん患者さん106人(局所進行性17%、転移性83%)。この試験において大きな問題となる有害事象は特にあげられておらず、有効性については全生存期間の中央値が9・23カ月、1年生存率が33%、奏効率は20・3%認められました。この結果から、両剤の併用は日本人の進行性膵がんの患者さんにも有効であり、生存の転帰に寄与することが期待できると考えられます。
このように消化器がんの領域においても分子標的薬を用いた治療は日々、進歩しています。当院では、世界レベルの情報を網羅し、最新情報に基づいたセカンドオピニオンを提供していますので、いつでもお気軽にご相談ください。