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嶋本隆司 医師コラム

最新情報に基づいた抗がん剤治療(9)

2010年 3月 8日
嶋本隆司 医師

国際水準の最新情報
~ESMO(欧州臨床腫瘍学会)2009の報告~
第1回 大腸がん

 2009年9月20日~24日の日程でドイツ・ベルリンにおいて第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)と第15回欧州癌学会(ECCO)が初めての合同学会を開催しました。その最新情報の1回目として「大腸がん」に関する演題を取り上げます。
●セツキシマブの投与は個別に考えていく必要がある

 大腸がんの領域では、抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体製剤のセツキシマブの治療成績は非常に注目を集めています。この薬剤に関する臨床試験はいくつか行われていますが、その捉え方は議論の分かれるところです。
 このような中、今回、ベルギーで行われたセツキシマブの統合解析の結果が発表されました。この解析に用いられたのは、転移性大腸がんの患者さんに「一次治療としてFOLFIRIの化学療法にセツキシマブを加えて投与する群と、FOLFIRIのレジメンのみを投与する群を比較した第3相試験(CRYSTAL試験)」と、同じく「一次治療としてFOLFOX4のにセツキシマブを加えて投与する群とFOLFOX4ののみを投与する群を比較した第二相試験(OPUS試験)」です。
 セツキシマブの使用に関しては、KRASの遺伝子変異が治療効果の予測因子として重要ではないかと言われています。今回、CRYSTAL試験ではKRASの遺伝子野生型が666人、KRASの遺伝子変異型が397人。そして、OPUS試験ではKRASの遺伝子野生型が179人、KRASの遺伝子変異型は136人。両方の試験データを統合し、KRAS野生型の患者さん845人だけに絞り、セツキシマブを投与する・しないで予後を見ると、無増悪生存期間では増悪するリスクが投与群で34%減少し、有意な改善が明らかになりました。加えて治療の奏効率も投与によって2倍以上に改善し、やはりKRAS遺伝子が野生型であれば、化学療法に上乗せしたセツキシマブの効果が明らかにあることがわかってきました。
 一方で、イギリスから「KRAS遺伝子野生型の進行性の大腸がんの患者さんへの一次治療として、オキサリプラチンと5-FUをベースにしたものにセツキシマブを加えた第三相試験」の結果が発表されました(図1参照)。その臨床試験に参加した患者さんは1630人。化学療法のとして、オキサリプラチンと5-FUをベースとしたmFOLFOXと、オキサリプラチンとカペシタビンを使うXELOXの2種類の治療が用いられました。いずれも、そこにセツキシマブを上乗せする試験を行い、さらにで、KRAS遺伝子野生型の患者さんだけを抜き出し、その全生存期間を調べました。すると、化学療法のみの群が17・9カ月、セツキシマブを加えた群が17・0カ月と、セツキシマブによる延長効果は認められませんでした。
 この結果から、KRAS遺伝子野生型の人すべてにセツキシマブの効果があるとは言い切れない。選択する治療方法や時期によって効果が異なってくる可能性もあるという結論に至りました。したがって、現時点におけるセツキシマブの治療の位置づけは、患者さんごとに個別に考えていく必要があるのだろうと言えます。
 大腸がんは分子標的薬の開発が活発に行われている領域です。当院では、世界レベルの情報を網羅し、最新情報に基づいたセカンドオピニオンを提供していますので、いつでもお気軽にご相談ください。