嶋本隆司 医師コラム
最新情報に基づいた抗がん剤治療(6)
2010年 1月 6日
嶋本隆司 医師
国際水準の最新情報
~ASCO(米国臨床腫瘍学会)2009の報告~
第3回 消化器がん
今年も世界最大のがん関連学会である米国臨床腫瘍学会年次学術集会が、5月29日~6月2日まで米国フロリダ州のオーランドにて開催されました。その最新情報の第3回目は、胃がん・大腸がんの領域における臨床試験結果を紹介します。
●「患者の層別化」が治療の有効性の鍵となる可能性
2009年のASCOにおいては、「HER2陽性の進行胃がんの患者さんに標準的化学療法に加え、トラスツマブを第一選択薬として投与すると、標準的化学療法群に比べて、有意に生存期間を延長できる」ということが示されました。この「ToGA試験」と呼ばれる国際的臨床試験は、世界24カ国で行われ、日本人を含めたアジア人の患者さんが約半数を占めていました。
HER2というタンパクは、乳がんの患者さんの約20%が陽性ですが、胃がんの領域においても、ほぼ同じ割合の患者さんが陽性です。このようなHER2陽性の患者さんだけを選出し、標準療法(5FUもしくはカへシタビン+シスプラチン)を行った群と、それにトラスツズマブを加えた群とで比較しました。その結果、全生存期間においては標準療法のみの群が11・1ヵ月であったのに対してトラスツズマブを加えた群が13・8カ月、無増悪生存期間においては標準療法群が5・5カ月であったのに対してトラスツズマブ群が6・7カ月と、双方とも有意に延長していました。さらに、抗腫瘍効果も、標準療法群が32・1%に見られたのに対し、トラスツズマブ群には41・8%に見られました。いずれにおいても、トラスツズマブの上乗せ効果が、証明された結果となりました。両群において副作用の発現頻度に差が見られなかったことから、この治療は非常に有望な治療だと言えます。
もう1つは、2期または3期の大腸がんの患者さんに対する術後補助療法として有効性が確立しているmFOLFOX6という化学療法にベバシズマブ5㎎/㎏を追加することで、無病生存期間が延長されるかを調べた臨床試験です。その結果、追跡3年時における無病生存率は、単独群が75・5%、ベバシズマブ併用群が77・4%と統計的な有意差は見られませんでした。
今回、取り上げた2つの試験の結果は、明暗を分けた形になりました。それは、トラスツズマブの臨床試験は層別化を行い、ベバシズマブの臨床試験は患者さんの層別化しなかったことが、治療の有効性を示せるか否かの分かれ目になったといえるでしょう。ベバシズマブはすでに進行性大腸がんにおいて有効性が認められていますが、術後補助療法としての位置づけには、何らかの層別化が必要かもしれません。
消化器がんの領域でも、分子標的薬の登場や個別化医療時代の到来により、セカンドオピニオンの重要性がますます重要になってきています。