嶋本隆司 医師コラム
第44回米国臨床腫瘍学会開催
2008年 11月19日
嶋本隆司 医師
2008年5月30日から6月3日まで、米国シカゴにおいて、第44回米国臨床腫瘍学会は開催された。この学会は、世界中から約3万人の参加者が集まる世界最大のがんの学会だ。私も5年前から毎年この学会には参加しており、がん治療の進歩を肌で感じてきた。
今回、発表されたがん治療に関する数々の最新情報の中から、乳がんに対する未承認薬の治療効果・安全性を報告するとともに、未承認薬に代わる前向きな治療法を検討してみた。
アバスチンは、VEGFというがんの血管新生を促す悪玉物質を標的にした分子標的薬であり、血管新生阻害作用が注目を集めている。この薬剤は大腸がん・肺がんにおいて生存期間の有意な延長効果を示しており、すでに欧米では承認を受けている。さらに転移性の乳がんにおいても、タキサン系抗がん剤のタキソールに上乗せして、「無増悪生存期間(がんが悪化することなく生存している期間)」を延長することが報告されている。そこで今回、もう1つのタキサン系抗がん剤であるタキソテールにアバスチンを上乗せして、転移・再発した乳がんの患者さんに対しての治療効果・安全性を確認する臨床試験が行われた。
この試験では、タキソテール単独群と、アバスチンを7・5mg/kgの低用量群、15mg/kgの高用量群の3つに振り分けて臨床効果を検証。その結果、無増悪生存期間は、単独群と比較して低用量のアバスチン投与群でも有意な延長効果が認められた。高用量群でも、治療効果はほぼ同様であったことから、アバスチンはそこまでの高用量を使用しなくても臨床効果が得られるかもしれないということが言える。しかし、日本におけるアバスチンの承認状況は、2007年に大腸がんに関して保険適用になったものの、その他のがんに関しては未だに先が見えない状況だ。
こういった報告を聞くにつれ、我々もアバスチンが使用できないでいる日本の患者さんに少しでも早くベネフィットを届けたいと強く思う。
つまり、アバスチンが使用できなくても、それに代わる治療を前向きに検討していくことが大切だ。VEGFを標的にするものは、アバスチン以外にもサリドマイドや、ある種のサプリメントでも認められている。当院でもオリジナルの腫瘍免疫チェックに基づき、VEGFを標的にした治療を積極的に進めていくべきだと感じた。
また、それらの代替医療でもVEGFが抑えにくい場合には、慎重な体制をとりながら、アバスチンを使用していく方法も模索していきたい。