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松島修司 医師コラム

Dr.松島の往診日記 第9話

2010年 4月28日
松島修司 医師

迅速かつ適切な判断で行った往診治療
第9回は「リンパ球療法の往診」にまつわるお話です。
●臨機応変に対応できる「大切な診療手段」

 2009年12月から2010年1月にかけ、流行していた感染性腸炎に罹患した患者さんが何人かいました。ある日、活性化リンパ球療法(患者さんから採取したリンパ球を約1000倍に増殖させ、サイトカインを加えることで体内に大量かつ活性化したキラー細胞をつくり出す治療法)を受けている患者さんから、体内にリンパ球を戻す当日に「来院できる状況ではない」と連絡がありました。
 患者さんの体内から採取したリンパ球は培養液の中で増強させ、約2週間後、当院の付属中央研究所における安全性検査を経て、それを遠心分離機にかけてリンパ球だけを取り出し、輸血用パックに詰めて密封します。こうして、その日、あるいは24時間以内に患者さんへリンパ球の投与を行います。時間的な制約がある理由は、新鮮で活性度が高いリンパ球を患者さんに提供するためです。
 リンパ球は培養液の中にある段階であれば多少なりとも体内に戻す日程を延期できます。しかし、パックに詰めてしまった後は、基本的に日程の延期は不可能です。ですから、前日までに来院できないという連絡をいただければリンパ球は延長管理とし、また、病状が不安定な患者さんの場合は、予約当日に来院できなくなるケースも視野に入れ、朝の9時までに留守番電話に来院できるか否かを知らせていただいています。
 今回、感染性腸炎に罹患した患者さんからの連絡は、治療の当日、最終的に輸血用パックに詰めた後の段階で来ました。大切に採取・増強させたリンパ球。破棄してしまうのはもったいないことこの上ありません。しかも活性化リンパ球は抗ウィルス効果も期待できます。急遽、私はその患者さんに投与するリンパ球と点滴用具一式を持ち、その居宅に向かうことにしました。当院では、往診は病状によって来院が困難な方を対象に行っています。今回のようにもともとQOLが高く、偶発的な他の病気によってその日に来院できなくなった患者さんは、普段は外出や買物もできるので、「往診してもらう」という意識はあまりないようです。ですから、私が「ご自宅でリンパ球を体内に戻すことも可能です」と伝えたとき、無理して来院するか悩んでいた患者さんは非常に喜んで下さいました。
 こうして、臨機応変に最善策を考えつつ、新鮮なリンパ球を確実に体内に戻していくことで、その治療効果が保たれていくのです。そして、その副産物として患者さんとの間に芽生えた「信頼関係」が、以後の診療にも役立っていると思います。最適なタイミングでリンパ球を投与したい......。患者さんの大切なリンパ球を無駄にしたくない......。そのような思いを実現させるためにも、私にとって「往診」はとても重要な診療の1つであり続けているのです。この患者さんもリンパ球投与翌日には感染性腸炎も良くなり、2週間後には元気な姿で来院されました。