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松島修司 医師コラム

Dr.松島の往診日記 第8話

2010年 3月 8日
松島修司 医師

がんと無関係ではない新型インフルエンザの流行
今回は2009年に大流行した新型インフルエンザにまつわるお話です。
●インフルエンザ流行で往診希望者が増加

 2009年は新型インフルエンザが猛威を振るいました。当院の患者さんのなかには、「タミフルと抗生物質の投与治療があと一日遅れていたら肝炎を悪化させてしまい、命が危なかった」と話す方もおられました。2009年、患者さんとはがんの話はもちろんですが、新型インフルエンザの話題も少なくありませんでした。
 2008年頃から、地方への往診が増え始め、2009年はより多くの往診希望を受けましたが、それも、新型インフルエンザの流行と無関係ではありません。がんの患者さんは、通常の方よりもインフルエンザには罹らないように注意しなければなりません。抗がん剤治療をしていれば免疫力も低下して全身の症状を悪化させてしまいますし、肺炎を引き起こすことも懸念されます。さらに、肺炎の治療ともなれば抗がん剤治療は併用できないため、その間にがんが進行してしまう可能性もあるのです。
 したがって、新型インフルエンザが流行の兆しを見せてから、通常は東京または京都の統合医療ビレッジに通院してきた患者さんのなかには、人込み自体を避けるため、往診を希望される方が増えました。がん患者さんにとって、新型インフルエンザは注意を要する病気だとわかっていらっしゃったのでしょう。そのような意味でも、今後、季節にかかわらず往診が増えてくる可能性は高いと考えています。
 また、2009年は「がんワクチン」や「ペプチドワクチン」といったキーワードが、がん治療の分野では頻回に飛び交いました。血液中や体液中を絶えず移動し、肝臓や皮膚などの組織に存在している樹状細胞は、異物抗原の1つであるがんを捕捉すると分化を始め、同時にT細胞にがんの情報を提示して誘導します。さらに、がんを叩くリンパ球のエネルギーとなるIL‐12やIL‐18、インターフェロンなどの善玉サイトカインをT細胞に提供します。このような性質を用いてがんを攻撃する方法が「がんワクチン療法」で、ペプチド(HLAにいくつかのアミノ酸が結合した分子)を薬剤として使用する方法を「がんペプチドワクチン療法」と言います。
 がんペプチドワクチン療法では、次のような症例がありました。甲状腺がんが再発した患者さんで、そこを集中的に治療するため、樹状細胞にペプチドワクチンを組み込んだ治療法に温熱療法・活性化リンパ球療法を併用しました。そして翌週に超音波検査をしたら、すっかりよくなっていたのです。これらのワクチンについて、患者さんに訊かれることが増えてきました。もちろん新型インフルエンザのワクチンについてもよく訊かれます。いずれにしましても、2010年も新型インフルエンザのニュースが舞い込んでくるたびに、患者さん1人ひとりのことを思い巡らせる一年になりそうです。