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星野泰三 医師コラム

統合医療的がん治療(20)

2010年 3月 8日
星野泰三 医師

末期からの起死回生の秘訣

 一般的に、統合医療を望むのは、標準治療ではあまり効果が期待できない進行性・難治性のがんを抱えている方々であり、そこには末期のがんを抱えた方々も含まれています。そして、このような状況に置かれた患者さんは、統合医療の力で起死回生を図ることを強く要望されています。今回は、その切望にどのように応えていくのかをご紹介します。
●「全身状態の把握と優先的対応」から「免疫力の回復と並行した抗がん治療」へ繋げる

 現在の医学では、進行性のがん、あるいは末期がんを抱えた患者さんを短期間で完治させることは極めて困難です。それでも、患者さんとしては、まず完治に繋がる治療を希望します。もちろん、早期がんや十分な体力が残っている状態であるのなら、まずどのような治療法が効果をもたらすのかを多角的に考えてもいいのでしょうが、いわゆる末期状態にある場合は、まず治療を受けることができる体力をつける、あるいは全身の臓器の働きを正常化させることが先決です。具体的に言えば、全身の代謝機能が低下して異化作用が行進し、体の栄養分が低下して腹水・胸水を招いたり、全身の脂肪やタンパク質を溶かしたりする悪液質の改善に力を注ぎます。その手段として、当院では、高速温熱リンパ球療法(独自の培養によって増強・活性化されたリンパ球が、高速温熱流に乗って体の隅々まで行きわたるようにした治療法)などを用いています。
 それと、末期の状態に陥ると、貧血や臓器不全、低栄養状態、黄疸、腎機能障害、呼吸障害などといった症状が出てくることがあります。これらの症状は、内科的治療としての栄養点滴や酸素療法などで改善していかなければ、免疫細胞療法や温熱治療、分子標的薬など、がんを治すための治療を行う以前に体がまいってしまいます。したがって、末期状態にある患者さんの起死回生を図るうえでの秘訣は、その全身状態を把握して優先的に対応することなのです。その体の改善に要する時間は、おおむね1週間。というのも、そのことに長い時間を費やしている間に、がんが進行してしまっては元も子もないからです。
 また、末期からの起死回生には「免疫力の回復と並行した抗がん治療」が不可欠です。たとえば、その患者さんの治療歴に未使用の抗がん剤があれば、それを免疫療法の妨げにならないくらいに低用量化し、リンパ球療法や樹状細胞療法などと併用します。ちなみに、免疫力が極端に下がってしまっている末期がんを抱えた患者さんには、当院では通常の混合培養よりもキラー活性を高くする特殊培養をしたリンパ球を、バイオラッシュ法(大量培養法の特徴を生かし、活性度の高いリンパ球を短期間に体内に戻すリンパ球療法)で注入しています。こうして一歩ずつ階段を上がるように免疫力を上げていくのです。
 前述したように、がんの増殖を抑制する低用量の抗がん剤の選択肢があればそれも行いますが、抗がん剤を使い果たしているのであればリンパ球療法に温熱治療や分子標的薬を加えたりしていきます。いずれにしても、約1カ月後にその治療法の評価をして、よい方向に向かっている場合は、間隔を空けてその治療法を続けていきます。
 末期のがんを抱えた患者さんの起死回生を図るには、まず全身状態を整え、次に免疫細胞療法に低用量の抗がん剤などをプラスして腫瘍を縮小させた後、地固め療法として長いスパンでの抗がん剤治療を行うのです。このように、体調が極めて悪化した状態から体力を引き戻し、何らかの抗がん的措置を行うことで、患者さんの治療に対する意欲も前向きになってくるはずです。