星野泰三 医師コラム
統合医療的がん治療(18)
2010年 1月 6日
星野泰三 医師
集学的がん治療としての
抗がん剤と免疫療法の併用
一昔と比べて統合医療も普及してきましたが、温熱治療や免疫細胞療法を受けるには各県庁所在地などの都市部に行かなければならない場合が多いようです。しかも、この2つの療法の併用が可能な医療施設となると少ないのではないでしょうか。加えて、そのような高度先進医療を希望する患者さんは、初期よりも進行性・難治性のがんを抱え、QOL(生活の質)の低下から外出もままならない状態の場合が少なくありません。そのような患者さんのニーズに応えるため、当院では遠隔地往診を行っています。
●患者側の苦悩に迅速・的確に対応する
外科手術・放射線治療・化学療法の3大治療の効果があまり期待できなくなった「がん難民」と言われる状況にあっても、元気になりたいと希望を持つのは当然のことです。したがって、先進医療を受けたいが外出がままならない患者さんやそのご家族にとり、温熱・免疫細胞療法などを自宅で受診できれば希望が沸いてくるはずです。
当院では、北は北海道から南は九州まで往診しています。その需要は(統合医療ビレッジがある)東京・京都まで通院するのが厳しい、がん治療の専門医が少ない、といった地域の方からの予約が比較的、多数あります。このような遠隔地の患者さんに温熱・免疫細胞療法などを行うため、当院の温熱療法のエキスパートである松島修司医師は、私よりも頻回に出かけています。たとえば、東北地方で暮らす肺腺がんの60歳代の女性を診療するため患者さん宅に行き、活性化リンパ球療法と樹状細胞治療を行いました。そのひと月後、患者さんは、当院まで通院できるようになりました。さらに往診を続けている東北在住の患者さんがいることを知った他の東北在住の患者さんが体調を崩したときに「私も往診に来てもらいたい」と希望されたので、通常の診療を終えたその足で東北新幹線に乗り込んだこともあります。
こうした往診の具体的なプログラムは、まず当院の予約センターに電話をいただくことから始まります。そして、そのまま直に患者さん宅にうかがい初診を行う場合と、当院で家族カウンセリングを受けていただいて大枠の治療方針を決めてからうかがう場合の2通りあります。いずれにしても、遠隔地の在宅治療であれば、私たちにはが毎日の健康管理ができませんので、地域の病院との連携が不可欠になってきます。
往診の初日、患者さん宅では、その容態を聞いて、治療の説明・検査・採血などをするだけに留まらず、その日に可能な限りの初期治療(栄養剤の投与・免疫注射・悪液質の改善・一部の温熱療法など)を行うようにしています。そして、2回目に、1回目の採血から培養したリンパ球療法や樹状細胞を用いた免疫細胞療法なども加えていきます。その間、治療評価と共に大事にしているのは、「2カ月後には体力を回復させ、東京まで通院できる状態にしましょう」などといった明確な目標を設定することです。
往診、とりわけ遠隔地への往診は、その時間内で患者さんが何に苦しみ、ご家族がどのようなことに悩んでいるのかを迅速に把握し、そのニーズに適した治療計画の確立やサポート体制の構築を的確に図らければなりません。ですから、往診は私たちを医師として成長させてくれる側面を持ち合わせた、大切な医療行為の1つなのです。